シンメトリーの「付加価値」



2009年5月19日。

東京ドームが揺れたと言われることがある。
ファンはこの日をこう呼ぶ。

「ムラサキ記念日」


この日はKAT-TUNのコンサートが行われていた。

大勢のハイフンが東京ドームに足を運び、6人が作り出す非現実的な世界観に酔いしれようとしていた。

コンサートははじまり赤西仁くんのソロ曲「ムラサキ」が歌われたとき、それは起きた。

メンバーの亀梨和也くんが赤西くんといっしょに歌い出したのだ。向かい合いながら。

ファンは発狂した。

この場にいた、わたしのもうすぐ8年目の付き合いになる親友の亀梨担はこう言う。
「とにかくすごかった」


「隼人と竜、どっち派?」



誰もが一度は耳にしたことのあることばだろう。
教室でぜったいに結論の出ない論争を繰り広げていたことをとても懐かしく感じる。
言うまでもなく、ドラマごくせんに出演していた赤西仁演じる矢吹隼人と、亀梨和也演じる小田切竜どちらが好みか、というはなしである。

驚くべきことに、この当時二人はまだジャニーズJr.だった。
たくさんのメディアにも露出し、
所々で演技に対する熱意を話す大人びた一面もあった一方、どこかあどこなさも残る一面もあった。

当時のある映像をみた。

それは、亀梨くんの誕生日を赤西く
んが祝うもので、ハッピーバースデーの歌を歌いながらケーキを亀梨くんの元に持っていってた。
終始二人は楽しそうで仲の良さがうかがえた。

このとき、赤西くんはハッピーバースデーの歌の最後に少しアレンジを加えており、亀梨くんはそれを覚えていて自身のラジオでこの「赤西ver」の歌で赤西くんのお誕生日をお祝いしていた。





それがいつからだろう。
話すだけ、目が合うだけでファンが騒ぐようになったのは。

彼らは知っていた。重々理解していた。
じぶんたちの絡みがとても需要があることを。
だからこそ彼らはじぶんたちの「仁亀」にじぶんたちで「付加価値」をつけた。



「レア度」を使って。


前述した亀梨担は言った。
「仁亀はヲタクを操るのが上手かったよね。ヲタクは手のひらで転がされてるのを知ってて、それでも仁亀に沸いた」

彼らは焦らすのが上手かった。
彼らは配給を小出しにするのも上手かった。

ヲタクは稀に配給されるわずかな絡みを何十回と見て、間接的な絡みですら血眼に探す。
このようなヲタクはやがて”信者”と呼ばれるようになる。



一万円札。
福沢諭吉が印刷されている。
千円札、二千円札、五千円札ときて一万円札がある。
いまの日本で一番価値の高いお札だ。
しかし、驚くことに原価は約21円だ。
極端に言うと紙切れである。
しかし、わたしたちは原価約21円のただの紙切れに”イチマンエン”の価値を見出す。
ただの紙切れを数枚振り込み、だいすきなジャニーズのチケットを取れる。
なぜか。なぜなのか。

それは、政府がその紙切れに「この紙には一万円の価値がある」と「付加価値」をつけたからだ。


仁亀もおんなじだ。
ただ男二人が目を合わせる、会話をする、向かい合う、歌い合うという行為に「付加価値」をつけた。



””あの、滅多に絡まない仁亀が””

ムラサキをいっしょに向かい合って、笑顔で二人で歌った。

だからあの日ファンはドームが揺れたと言われるほど発狂したのである。仁亀の完全勝利だ。


いま、わたしには応援しているひとがいる。
ジャニーズJr.の神宮寺勇太くん(17)という。ギターやラップを得意とするスタイルの良い家族思いのやさしいとてもかっこいいひとだ。

勇太くんには、シンメの関係を組む岩橋玄樹(18)くんというひとがいる。
甘いマスクと裏腹に野球少年で負けず嫌いというギャップを持つおじいちゃんっ子のやさしいひとだ。

二人はシンメを組んで2年が経つ。

二人のシンメについては露出も多い分、いろんな意見がある。
わたしはこの二人に、これを望みたい。

「付加価値」

ヲタクの思い通りになんてならなくていい。惑わされて転がされて、それでも二人を欲したい。


やり方は問わない。
レア度をつけても、過剰な仲の良さでも良い。

シンメは、欲しくて手に入るものではないとおもっている。
美しすぎる顔立ちにスペオキに絶対的なセンターという立場を手に入れた佐藤勝利くんが唯一手にしていないもの。
それはシンメという存在だとわたしはおもっている。

いま、神宮寺勇太くんに岩橋玄樹くんというシンメトリーがいること。

そのことに深く感謝しながらこれからも二人らしくじぶんたちのやり方で「付加価値」を付けて二人でテッペンとって欲しい。

奇しくも、神宮寺勇太くんの尊敬する先輩には亀梨和也さんの名が挙げられている。

いつか、いつの日か
必ず......